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黄褐色の相棒と歩む、音楽という名の旅路 / ピアニスト 松本峰明

>本日はよろしくお願いします。ではまず、ピアノとの出会いを教えてください。

松:よろしくお願いします。そうですね、最少は幼少期に家に置いてあった足踏みオルガンを弾いていました。そのうちどういう理由か先生をつけましょう、となったらしく。そして幼いながらオルガンは鍵盤が足りなくて、ピアノを弾きたいとリクエストしたわけです。私が幼稚園生ぐらいの話ですけど、両親が大喧嘩しつつどうにか買ってくれたのが最初のピアノです。私が今66歳なんですけど、私が幼稚園ぐらいの時代っていうのは結構、子供にピアノを習わせる家庭が多かったんです。それで小さい子達がこぞってピアノの先生の所に集まるような、そういう時代でした。でもまあ大体続かないんですね。(笑 せいぜい1年も続かない。直ぐ辞めちゃうケースが殆どで。でも、どういうわけか私は続いた。まあ音楽が好きだったのかもしれないし、他の事が向かなかった、というのはあるかもしれないですけどね。そして弾けるようになってくると面白さもわかってきて。まあそんな感じですかね。

>なるほど。音楽への興味、幼少期から気付き始めたピアノの面白さ。そしていくつかのきっかけや偶然が重なsってピアノと出会われたわけですね。

松:最初はクラシック。そして13歳、14歳ぐらいからベンチャーズやビートルズね、もう誰もが聴いていました。いわゆる軽音楽です、私もその当時はギターも弾いてみたり。当時はまだエレキギターが出始めたばかりでした。私も何とかギターを手に入れて弾いていましたね。そんな中、徐々にロック、そしてジャズに触れ始めるんです。最初はよくわからなかったんですけど、いわゆる巨匠という類の演奏を聞いたときに衝撃がありました。それからですね。ジャズって基本的に、いや、全部アドリブっと言ってもいいくらい。ロックでもアドリブってあるじゃないですか。ちょっと間奏をギュイーンって弾く。まあそれの延長なんだけど。ジャズってそっちがメインなんですよね。例えば、特定の楽曲でも、演奏する人によっての違い、その変化が面白いんだよね、それがジャズっていう音楽ともいえる。やり方は無数にある。どういうリズムでやってもいいし、どういう演奏の仕方をしてもいい。ただ結果が良ければ良し。どんなに難しいテクニックであっても、それが面白くなければだめって言われちゃう、そういう音楽。

>すごい、アーティスト同士が音で裸でぶつかり合うようなものでしょうか・・・

松:まあね(笑 アドリブってね、アドリブに聴こえない事があるんですよ。ものすごい緻密なクラシックの楽曲を丸暗記して弾いてるようにしか聞こえない。特に最初はね。でもそうじゃないタイミングが訪れて、その場限りで弾いてる事がわかるようになる。最初は自分でも信じられなくて。その辺からですかね。

>そうすると、譜面はあってないようなものなのでしょうか?

松:とにかく自由ですね。だいたい、簡単な譜面がおいてあるくらい。精々、キーとなるコードが渡されて、あとはそれぞれで好きな自分なりのアドリブで音を出す。どういった感じで弾くかは演奏者の好き勝手。同じ人でも数日後の演奏は全く違う感じになっちゃうとかね。もちろん演奏者が変われば全く違う。

>アドリブがメインなだけに、演奏者の感情が音に素直に表れるのでしょうか。面白いです。

松:面白いでしょ。例えばクラシックとは全然違う。ジャズにも外してはいけないコードはあるんだけど、それさえ守れば人それぞれ好きなように弾いていい。ただよくわからないコードとメロディだけを弾いたってジャズにはならない。あと、何よりも自分で演奏する事でジャズっていうのは特に楽しめる音楽だと思います。

>ありがとうございます。松本さんの演奏をお聴きして、自分が知っている曲でもそのアレンジがすごく素敵でした。

松:ありがとう。私なりにちょっと変えて、そのうち、もうへんてこりんになってしまったり。(笑 でもそれが意外に反響があったりしますね。

>ありがとうございます。では松本さんにとってピアノとは何でしょう、また始めたころと今とでの違いは。

松:今と昔とでの違いね。まずピアノを習うという限りではお決まりの段階を経ていく。少しずつ難しい曲をね。今思うと練習は義務的で、別にピアニストになろうなんて全くなかったし。でもそんな中でも他の生徒よりうまく弾きたいとか、あと楽曲との出会いね、ショパンとか。そういった今に繋がる片鱗はあったのでしょうね。学んできたベースがあったおかげで、ロックやブルースは見よう見まねで出来るんですよね。それからアドリブもね。でもジャズだけは違う、そう簡単にはいかなかったんだよね。一方、以外にもハーモニー的にはショパンとすごく似ているような気がして。そんな共通点もあったり、あとジャズのリズム感が好きになって。今までやってきたクラシックみたいに、ただ譜面通り弾くものとの違いに興味が移ったってところですかね。

>では次に、今後演奏されたいステージや場所などございますか。

松:特にはなくて。例えば大編成のオーケストラをバックに、自分が真ん中で思い切り弾くっていうのに憧れる人もいる。私はどちらかというとそうではなくて、こじんまり演奏するほうが好き。ジャズであってもそう。ちっちゃい編成でね。

>仰るとおり、先程からとにかくこちらの空間がとても素敵で、数人数でのセッションにとてもあうような場所ですよね。(取材で訪れたのはピアノが置いてある松本さん所有のライブスタジオ兼、教室)

松:ありがとう。特にこのピアノは珍しくてね、ファツィオリ(FAZIOLI)っていいます。

>見たこともないです、こんな美しいピアノ。

松:日本にも数台しかなくてね。まあ演奏する場所は、そんな感じでしょうか、あんまり大きくないところ。そして、できればピアノはちゃんとしたものが置いてある、っていう感じですかね。

>では次に、ピアノを聴く人に、どういう時ににご自身の演奏を聴いてほしいか。

松:なんでしょう、自分の演奏を聴いてほしいという意識はあまりないんですけども、ただ後で感想を言われると、ああそうなんだって思うようなことが多いですね。ただそういうときに、なんここうすごく苦しかったとか、いやな思いをしてたのが私の演奏を聴いて、それが癒されました、なんていうことを言われたら嬉しいですから。自分でそう意識しているわけではないけれど、これまでピアノを弾いてきてよかったんだな、とは改めて思います。

>意識的ではないからこそ、聴く人に素直に届くのかもしれませんね。

松:あとは、例えばですけど自分が嫌な思いをしたときに、自分を癒すために弾く、こういう曲を演奏したら忘れられるなって、そういう思いで弾くことはありますね。自分のその感覚を、なんていうか嫌な思いだったり、まあ嬉しいときは嬉しいであったり、自分の気持ちを切り替える為に演奏するってことはあります。

>では次に、TOKYO OMNIBUSを通してアンサンブルで手合わせされたいパートは。

松:例えば和楽器。尺八は今でもよくセッションします。あと三味線とかね。最近は西洋の音楽をやりつつ和の音も取り入れる人が多くて。そういう人とやるのは楽しいですね。

>和楽器とピアノ、面白いです!その組み合わせは拝見したことないです。

松:これまで和楽器の方と何度かやったことあるんですけど、みなさん本当に上手い。同年代の知人でね、尺八を制作してる”三塚幸彦”という方がいて。その方だったり、その方の生徒さんもね。極端に言うと和楽器でもどこかの国の民族楽器でもいいし、そういうのをやってみたいですね。

>では次に、これまでピアノに救われたことはありますか?

松:私の場合は普通の大学に通ってたんですけど、その頃からかな、演奏する事でギャラをもらえるようになって。救われたっていうより、私の場合はピアノがあったからこそこれまで生きてこれた感じ。

>ありがとうございます。では次の質問、ピアノとともにご自身のこれからのビジョンについて、成し遂げたいことがあれば

松:ビジョンっていうか、なんかね、次の世代へ伝える方法を考えないといけないなってっていうのがありますね。例えばジャズのノウハウだったり。次の世代に知ってることを伝えていくっていうのをこれから増やしていかなきゃいけないだろうなとは思っています。

>ちょっと疑問に思ったのですが、ジャズを教えるときにこういう譜面って、松本さんがアレンジされたものを弾くのでしょうか。それともその…

松:ジャズを本気で習得しようって場合は、その人が勝手に弾くってことをできるようにさせてあげないといけない。例えば私が譜面を作って、オタマジャクシで書いてこうやると私が作ったジャズは、まあそんなにおかしくない演奏にはなると思うんだけど、一生懸命練習して譜面通りやってジャズが弾けたとは言えないわけで。各個人が自発的に、例えばこの譜面を見て自発的に自分でどういう風に和音をつくって、どういうアドリブをやるか、自力でできるようにアドバイスする必要がありますね。

>難しそうです、習得するのは。

松:難しい。素人の方に言ってもまずわかってもらえない。最近ね、私が言うのは、まず、クラシック音楽っていうのをオタマジャクシを、“水泳で言ったら浮き輪みたいなもの”だって言うんですよ。浮き輪があったら、つかまって浮くじゃない。で、とりあえずバタバタやれば進む。だけど、浮き輪取っちゃったら沈んじゃうじゃない。で、ジャズっていうのは浮き輪取っちゃった音楽なんですよ。浮き輪がないのにスイスイ泳げるようになる状態、それが一流のジャズプレイヤーなわけだけど、スイスイ泳げる前にまず潜って、下手すると溺れちゃうわけね。そこを溺れないようになんとかもがいて、そのうち立ち泳ぎくらいはできるようになって、さらに平泳ぎで前にすすむようになって、で、スイスイいって、もの凄いスピードで泳げるようになって、オリンピックに出場出来るくらいに泳げるようになる、それと同じような事をやらないとジャズって出来るようにはならない。簡単な譜面さえあれば好きなように勝手に弾ける、これがスイスイ泳げるようになった状態だとすると、そこに行くには先ず浮き輪を取る必要があるわけね。それまで学んだ事を一旦、捨てる必要性もでてくる。

>ありがとうございます。では最後に、この記事をご覧の皆さんに一言お願いします。

松:音楽の凄さ、たとえばどんな言語であっても話せる人とそうでない人がいて、でも音楽にはそれがない。だからこそ、このコロナ渦でより音楽に触れてもらって、音楽を世界中の人と共有して繋がったり。そういうのをぜひ皆さん体験してほしいと思います。そういうきっかけになる何かをできればいいかなと。