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4人の絆が音色に替わる瞬間 ~(後半)/ 津軽三味線「華凜」

津軽三味線「華凜」(カリン)

インタビュー後半では「華凜」のみなさんの素顔に迫ります。

― 三味線の多重奏の醍醐味についてお聞かせください。

ERIKA:まずステージでの三味線の演奏は、基本的に他の楽器がない事が多いですね。故に三味線のみの音色で、例えば4人全員がメロディーを演奏すると面白味がありません。なので2人がメロディーをハモって、1人がベース、1人がギターのパートといったようにバランスを取り、常に音の厚みを出すように工夫しています。

WAKANA:家族だからこそ実現できる域なのかもしれません。その点はメンバーが家族でよかったなと思うところです。言いたいことも言えますしね。

― パート割は曲事に予め決めているのでしょうか。

ERIKA:そうですね、その曲によって弾き方の特徴があるので、曲事に決めることになります。

― みなさんお一人お一人の特徴がより活きて、聴く側も曲によって変化があって、より楽しめそうですね。

YUUMI:三味線の音は弾き手によって音が違うし、楽器によっても音が違うんです。

EMIKO:三味線の表面に貼ってある皮は犬皮を用いる事が多いんですけど、破れることがよくあって。張り替えるとその度に音が変わるんです。例えば最近はYUUMIの音が割と低めの強い音が出る、といったように。

WAKANA:曲によって一番目立つものがメロディーだったり、リズムだったり違いがあるので、その曲に合わせて誰がメロディーを弾くのか曲毎に決めています。

― なるほど、みなさんそれぞれ演奏の個性があって、それを上手く活かせるよう曲事にパートを割り振る、且つ三味線自体の特徴も活かしつつ。でも華凜だからこそ、それぞれで自分の役割を自覚されているからこそ実現出来るんでしょうね。

ERIKA:たとえ喧嘩になっても最終的にはね。(笑)

皆さん:うんうん。(笑)

WAKANA:みんなで意見を出し合いながら曲の演奏構成を決めています。

― 言い合う事も多々あるんですね。(笑)

EMIKO:小さいころはよく喧嘩もしたんですよ。反抗期だったのかな。 (笑) でも音を出す時にはしっかりと息を合わせて。

ERIKA:誰かがミスをしても、誰かが気づいてカバーする事で、演奏が止まる事はまずないですね。

EMIKO:以前、プロレスの大会でリングの上で演奏をさせて頂いたことがあるんですけど、四面に全員背を向けて、お互いが見えない状態での演奏。その時にYUUMIの三味線の糸が切れちゃって。でも直ぐにみんな気付きました。曲の最後のほうに一人ずつ演奏していく場面があるのですが、私がYUUMIのパートを急遽弾いて最後まで凌ぎました。

ERIKAさん:それを見ていたプロレスラーの方が感動されて、パフォーマンス的にも良かったって。「あれは演出なの?」と尋ねられました。(笑)

YUUMI:あの時はハプニングが逆に功を奏しましたね。

― 皆さんの息があっているからこそですね。そのリングの上での演奏も、他の音色はなく三味線のみですか?

WAKANA:そうなんです。今までイヤモニをつけてカウントを取りながら音源と合わせて演奏したことが殆どなくて。アレンジを加えながら色んな音を使って、自分たちで作ってみた曲は何曲があるんです。それを再生しながらステージ上で演奏するという方法は、今はまだ機材も揃ってないためお披露目出来ない状態です。

リング上での演奏でハプニング発生!?

― ありがとうございます。では次にTOKYO OMNIBUSを通して実現したい事、チャレンジされたい事はありますか。実演してみたいアンサンブルやステージとかありましたら。

ERIKA:私はDJさんとコラボしたいですね。三味線はアップテンポの激し目な曲とも相性が良いと思っています。それこそロックバンドも合うと思いますし、DJについては個人的なイメージなんですが、リズムで勝負されている気がしています。一緒に演奏すれば、リズム感も鍛えられるかなと。リミックスとかもお願いしたいですね。以前、クラブでDJさんが三味線の曲を流していたことがあったんです。すごくカッコいい印象があって。曲の一部でも三味線で実際に弾いたら絶対にカッコいいと思ってます。

WAKANA:私はプロジェクションマッピングかな。三味線を合わせたら絶対かっこいいと思っていて。プロジェクションマッピングに合わせてダンスをしたり、色んな方がいらっしゃいますが、三味線も絶対に喜んでもらえると思っています。

ERIKA:今風の手法で昔を伝えたいですね。近未来であって、心は昔ながらというか。

WAKANA:あと海外の方向けに、例えば空港で演奏できたらいいなと思います。日本の良さを、よりたくさんの外国の方に伝えられると思います。

ERIKA:海外と言えばハワイで弾いた事があるんですけど、反響が凄かったんです。海外の若い方が泣いていたり、もっと聴きたい!と言っていただいてCDが欲しいとか。そんなリアクションをされたことが新鮮で、とても嬉しかったですね。

YUUMI:海外をたくさん周りたいですし、海外のアーティストともコラボしたい。色んなアーティストの方が出るフェスにも参加してみたいですね。

― 三味線は日本を代表する楽器。日本から発信する、伝える、という意味でもとても素敵な事ですよね。華凜さんだからこそできる事だと思います。TOKYO OMNIBUSには海外アーティストの方も参加されているので、是非、共演されてください。では次にアーティスト活動を通じてファンの皆さんに伝えたい事、また叶えたい事はありますか?

WAKANA:やっぱり私たちの曲を聴いていただく事で、元気や活力になってもらえると嬉しいですね。私自身、音楽を聴いてテンションを上げたりするので、私たちの曲を聴いて今日も頑張ろうと思ってもらえるとすごく嬉しいです。

人の心に寄り添える、癒しになるような曲を作りたいです。その人にとってのBGMになるような曲を届けたいですね。津軽三味線は弾いている側にとっても奥深い楽器だなと思うんです。楽器一本でその人の人生が見えるというか。人生が深ければ深いほど、いい音が出せると思うので、変な話、苦労している人ほど感動する曲を弾けるケースが多くて。人の心を動かせたらいいですね。

― 人生を表現する、言葉では言い表せない物なのでしょうね。

EMIKO:私たちは歌詞のない曲を演奏する事が多いのですが、音だけの方が伝わる部分もあると思っています。

YUUMI:具体的には “間” とか弾き方、抑揚とかですね。弾く人によって味が違います。

EMIKO:三味線ってギターと違って、ツボでおさえるんです。ある年配者の方が演奏されていた時、ツボが違った事があったんですね。でも音は外れていても不思議と上手さを感じたんです。味のある演奏でした。綺麗に確実に弾く事も大切ですが、やはり味のある演奏というのが一番難しい事だと思ってます。

WAKANA:津軽三味線でしか出せない和音とか、ピアノのコードにない音もあるので、ドレミファソラシドだけではなくて三味線固有の“音”っていうものが存在するんですね。それがまた神秘的というか…、異次元にいるような感覚になれる音も出せるので、不思議なんです。

ERIKA:三味線で新しいものを作りあげたいです。イメージを覆したいですね。

― ほんとに三味線はお聞きすればするほど奥深い楽器ですね、異次元に誘われるような演奏をこれからも楽しみにしています。そして今後の活動形態ですが、はやりライブが中心になるのでしょうか。

WAKANA:どうしても今はこのコロナ禍でライブが難しい状況が続いていますね。

YUUMI:でもこれまでも結婚式場や施設、電車の中で演奏した事もあり、可能な場所から徐々に始めていければと思っています。

EMIKO:ホスピス病棟で演奏させて頂いた事もありました。

ERIKA:介護施設では、今まで食事が進まなかった方が、私たちの演奏を聴いた後にパクパク食べ始められた事は印象に残っています。

― 音楽の力、皆さんが奏でる音には特別な力があるんですね。他にはない力。では、そんな華凜の成り立ちについて、リーダーのEMIKOさんに改めてお聞きします。

EMIKO:実は私も三姉妹の末っ子で、姉二人はピアノを習っていました。私は本当はバレエを習いたかったのですが、バレエ教室が離れていて、家が自営業だったので送り迎えができないという理由で断念したんです。それでたまたま近所に津軽三味線と民謡を教えてくださる先生がいらっしゃって、それで始めました。当時はテレビに出演させて頂いたり、色んな場所で演奏させていただきました。楽しかったですね。「笑点」や、「8時だよ!全員集合」といった番組にも出演させて頂きました。それから一旦、三味線の道をあきらめたのですが、出産を経て、知り合いが三味線を習いたいと言ってくださったのがきっかけで、高校生の時に師範の免許もとっていた事もあり、最初はお友達に教えていました。その後少しづつ生徒が増えていきまして、気がついたら教室になっていました。(笑)そして娘たちに何を習わせようかとなった時に、やはり環境も整っているので三味線を教える事が一番いいのかなと。

WAKANA:私は他にも幾つか習い事をしていたんですが続きませんでした。母が教室を開いているのならそっちのほうがいいかなって。最初は嫌だったんですけどね、やってるうちに… (笑)

ERIKA:逃れられない、これが運命か、と。(笑)

― お母さんの影響は絶大だったんですね。

WAKANA:最初は何となく初めて、ただ続けていくうちに生活の一部になりました。練習しないとすっきりしなくなって。

EMIKO:旅行に行くときも楽器がないとそわそわして違和感があるんです。

WAKANA:高校を卒業するときも、進路を選ぶ際にやっぱり三味線のことを考えてしまって、大学に行くことも考えたんですけど、特に専攻したい事もなかったので、その時間を三味線にあてたほうがいいんじゃないかと考えました。結果、三味線奏者になると言って高校を卒業したんです。当時は若かった事もありますけど、今でもこうやって三味線を続けているという事は間違ってなかったんだな、と思っています。

― ありがとうございます。それでは最後に、FORTIS 読者に向けて今後の華凜の方向性、注目する点について教えてください。

WAKANA:純粋に三味線の音を伝えて行きたいですね。女性4人のユニット、アイドルのような感じで、というお話も頂くのですが、家族で三味線の四重奏である事に拘り続けたいですね。なぜか、3人で弾いている時と4人で弾いている時って、音の感覚が全く違って。音の深みが違うんです。

YUUMI:4人のバランスが大事なんです。一人もかけてはいけない。

ERIKA:4人でなくてはいけないんです。

EMIKO:それぞれの個性を掛け合わせる事で、はじめて華凜の音が生まれるんです。

WAKANA:LIVEを活動の主体とする私たちにとって、このコロナ禍で厳しい状況が続いています。でも家族4人で支え合い、この状況を乗り越えて、早くみなさんの前で私たちの演奏を届けられればと思います。