光田 康典
コンポーザー、アレンジャー、音楽プロデューサー。
プロキオン・スタジオ 代表。
代表作として『クロノ・トリガー』、『クロノ・クロス』、『ゼノギアス』、『ゼノブレイド』シリーズ、アニメ『ダンジョン飯』など。
光田 康典(Yasunori Mitsuda)/ FORTIS.TOKYO in-depth interview. ChapterⅠ前半記事はこちら。

音楽を「仕事」として捉えること、伴う厳しさと揺らがない覚悟、決して安定した道ではない。それでもなお、多くの人が音楽を追い求めるのは、そこにしか辿り着けない景色があるからだろう。生きていくために音楽を選ぶのか、それとも音楽を選び続けた先に仕事という形が生まれるのか。厳しさの先にある可能性と、音楽を信じ続ける意味を言葉にして届けていただいた。
/ 音楽を仕事とする事について /
光田:この間、会社宛てにメールが届きました。それは、僕がSNSで、“熱量のない作品、また、自分が喜びや学びを感じない作品には参加しない・・・正確には出来ない。” そんな主旨の発言をしたことに対してある意見をいただきました。それは、“あなたは名前が知られている。だからこそ、そういった事が言える” という内容でした。それで思わずその方に返信しました。全く真意が伝わっておらず、そういう意味で発言したのではないという事を。
僕が仕事が選べる立場だなんて、そんな事は全く思ってもいません。これは、音楽に限った話ではないのかもしれませんが、今の僕の状況においてもいつ仕事として成り立たなくなってもおかしくはないんです。そもそも生活の安定を重視して仕事を選ぶのであれば、この仕事を選択していないと思います。最も不安定な仕事だと言ってもいいですし、音楽が無くても皆さん生きていけるわけで、真っ先に生活から切り離されるのはこうしたエンターテインメントだと思っています。また、仮に生活が出来ない状況になったとしても、それを受け入れて音楽と関係のない仕事だってやる覚悟もあります。そういった不安を抱きながら音楽を「仕事」として捉えるのでしたら、精神的にもやるべきではないと思っています。やりたい事が明確にあって、それをやりきる、音楽を通して誰かに伝える、という揺るぎ無い強い思いがあってこそ成り立つ仕事なのです。本当に「仕事」として音楽を捉えていて、続けていくのであればその考え方は改めるべきと思い、長文で返信をさせてもらいました。
― Nero この社会で生活をするための仕事、その生業として音楽を選択する、そう捉えている方に向けて気付いてほしかった訳ですね。
光田:そうなんです。生活するための仕事として音楽を一つの選択肢にするのではなく、何よりも音楽が好きで、伝えたい事、やりたい事があって続けていくべきだし、仕事として成り立つ状況はその延長上にあるものなんです。稼がなくてはいけないからそのために音楽をやる、その発想は先ずうまくいかないですし、そういう方を数々見てきました。そもそも数ある職業の中でも、音楽で生計を立てるって本当に難しい事ですから。
広くは知られていなくても、素晴らしいアーティストはたくさんいます。それは日本に限った話ではありません。海外のインディーズシーンにおいても本当に良い楽曲を書くアーティストをよく見かけます。一方で、今の時代、聴く側の術は本当に様々で、数えきれないくらいのサービスやツールがありますからね。僕の楽曲も、聴く人によって様々な届け方があるのではないかと思います。昨今はストリーミングサービスが一般的になりつつありますが、それだって幾つもの会社が運営しています。一昔はCDのみでしたので、ゲームの宣伝と同時にサウンドトラックの宣伝が雑誌などでおこなわれていました。これは宣伝費を浮かせるという意図と、ファンの方が目にしやすいという両方の意図があります。そういったこともあり、ゲーム発売の1ヶ月以内にサウンドトラックを出すという流れがありましたが、今は当時に比べて明らかに情報が分散しているので興味をもって探していただかないと届かない事もあると思います。そう考えると今の時代は知ってもらう、ということがどれほど大変か身にしみて感じている部分です。それほど音楽を商売としていくのは難しいということです。また、同時に素晴らしいアーティストが埋もれてしまっている現状も否めないですよね。もっと世に知れると良いな、というアーティストも沢山いますからね。
― Nero 「FORTIS.TOKYO」 の趣旨も、そういった素晴らしいアーティストを紹介していくという趣旨も含んでいて、今お聞かせいただいたお話は本当に共感できます。
光田:ええ。これからも多くのアーティストを広めていただきたいです。
― Nero 確かに、聴く人からすると既に興味があるアーティストの場合は、その活動を追って作品にしても手に取るのでしょうけど、これから新たに知る、という機会は相当限られていて、残念だけど奇跡的で偶発的な出逢いも多いように思います。
光田:本当にそうでしょうね。音楽も然りゲームもそうでしょう。それでもたくさんの素晴らしいアーティストに世に広まってほしいと願っています。
/ 日々の生活からのインスピレーション /
― 日頃から、音楽へ繋がる刺激や着想に繋がるよう意識されている事はあるのでしょうか。音楽以外の趣味的なものでも。
光田:最近始めたのが、フィギュアに色を塗る事です。
― 一同 フィギュアですか!(驚
光田:はい。これが意外に奥が深くてですね、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」という、かなり前に発売された、アメリカのテーブルトークRPGのフィギュアです。最初はアニメ(※)『ダンジョン飯』の世界観を立体的に見て想像しながら音楽を作っていきたいという思いがあり、始めたのがきっかけではあるのですが正直少し舐めていました。塗り絵と同じだろうと思っていたのですがとんでもなかったです。フィギュア自体はこのくらい小さく精巧に出来ていて(手で表現)、この小さなフィギュアに色を塗っていくわけですが、いかにリアルに塗るかがとても面白くとても奥が深かったですね。
普通の感覚だと、例えばサンプルの写真があって同じような色をそれっぽく塗ればうまくいくと思いますよね。それが全くそうはいかないんです。笑 色合い自体もそうですがベタに塗っても上手くいきません。ベースを塗って、レイヤーを塗って、シェードを塗って、ハイライトを入れる、など、かなりの工程があります。その順番を間違えただけでも全くそれっぽくならないですし、絵の具と水の量や筆の大きさによっても大きく仕上がりに影響してきます。それが実は、音楽を作っている感覚ととても似ているんです。レイヤーの重ね方でやってはいけないパターンや、シェードの入れ方でより立体感を出すコツがあったり。音楽と凄く似た部分があるんです。今、フィギュア塗りを教わってる先生がいまして、その方から塗り方を教えてもらったんです。その先生と同じフィギアを選んで、それぞれで色を塗ってみても、出来上がりは全く違うんですよね。それで、どうすれば近づけるか教わったり、自分で試行錯誤したりしています。完成のイメージが自分の中で見えていないといけないんですよね。それって音楽と全く同じだなって。色彩センスって音色センスと本当に似ていると思います。
(※)「ダンジョン飯」
九井諒子さんによる日本の漫画作品。「ダンジョン飯」TVアニメでは光田さんが音楽を手掛ける。
TVアニメ「ダンジョン飯」オリジナルサウンドトラック 紹介ページ(プロキオン・スタジオ)
今は、必ず夕方2時間はフィギュアを塗って、そして寝るときに思い返すんです。あの色はこれが良いかな、そっか、あの曲もこうしてみようかな、みたいに。全く違うジャンルですけどヒントを貰える事が多々あります。一見、またフィギュア塗ってて・・・仕事は? みたいな感じで思われるかもしれませんが、これもれっきとした仕事に繋がる大事なホビーですね。笑
― Nero 光田さんが、実はフィギュアの色塗りから受けたインスピレーションを楽曲へ反映させている、とはファンの方は思いもしないでしょうね…。
光田:音楽制作におけるヒントは色々なところ貰える事が多いと思います。フィギュア塗りは作品の捉え方で共通する部分が多いなと感じています。そもそも、音楽だけを長時間やっていても、どうしても集中力は持続しないですし、行き詰ってしまうことがあります。違う事から刺激を受けつつ音楽に反映したり、気持ち的にもリフレッシュできるのでより仕事に集中できるようになります。
カメラとかもそうですね。一時期とてもハマってレンズを集めたりしていました。やはりカメラもどこか仕事と連動するんです。曲を書いていて、ああ、これはどうしようかなって、もうにっちもさっちもいかない時に、ふとカメラだとああだよな、フィギュアだとこうだよなって、じゃあそれを音楽に当てはめるとどうなる?と考えると、悩んでいたところがすっと解決することがあります。自分の場合、音楽の問題を音楽で解決させないことの方が多い気がします。
― Nero 生活のすべてが音楽と連動していて、いつ、どこに作曲に繋がるヒントが落ちているか、常にそういった意識がおありだからこそ、自ずとたくさんの体験を得る事に繋がっているのかもしれません。
光田:そうかもしれません。趣味として星の撮影なんかも好きでキャンプしながら撮影したりしますが、日ごろ感じられない驚きであったり、感動であったり、趣味や遊びからインスピレーションを受ける事はあります。
― Nero 社名(プロキオン・スタジオ)に恒星の名前を採用されてますよね。光田さんのご趣味の作品は、いつか私たちでも拝見できる機会はあるのでしょうか。
プロキオン・スタジオ 野﨑:みなさんに見ていただけるよう、インスタグラムを始めたら如何でしょう。写真やフィギュア、あえて音楽以外の作品を集めてみたり。
― 皆 フォロワー数は一瞬で増えそうですね!
光田:最初はただただ塗ったフィギュアの写真ばかりアップして、2年後ぐらいにはめちゃくちゃ上手になってたり。笑
/ 楽曲制作のルーツともいえる映画について /
― Nero 幼少期から見始められていた映画は、例えばどういった作品だったのでしょうか。
光田:そうですね。小さい頃から白黒映画などの古い映画から最新のものまで多く見てました。そういえば、テレビ自体も白黒テレビがまだありましたね。確か家のテレビも小学校1年生の頃までは白黒だったと思います。ですのであえて白黒映画を選んでいた、というよりは自然に手に取って見ていたという感覚でしょうか。初めてカラーテレビを見た時に驚いたのは今でも覚えています。
映画は好きなタイトルでいうと「鉄道員」、「死刑台のエレベーター」やオードリー・ヘップバーンが出演している映画が好きで「シャレード」、「ティファニーで朝食を」、「ローマの休日」などですね。自分の中では「シャレード」がベストかもしれません。刑事ものなんですが、当時はロマンチック・サスペンス、なんていうジャンルでした。音楽も凄く良くて。その頃の映画は本当に好きですね。特にイタリア映画なんかもよく観ていました。
― Nero 小学生の頃ですよね、どのようなきかっけでイタリア映画に興味を持たれたのでしょう。
光田:当時、大きく分けるとアメリカの映画と、ヨーロッパの映画の両者がありました。アメリカの映画はアクションやサスペンス系のストーリーが多く、大抵はハッピーエンドで終わるんですよね。一方でヨーロッパの映画は少し奇抜といいますか、もっとミニマムな世界観の作品が多く、サスペンスにしてもホラーにしてもエンディングで結局これはどうなった? と余韻を残すものが多くて。そもそも結末が描かれてなかったりする作品も結構あります。自分はどちらかというと、その後は視聴者に委ねる・・・みたいな映画が好きで、そういった部分に惹かれたのかもしれません。それだから映画を見終わったあと、ずっと作品のことを考えてしまう。引きずっちゃう感じが好きだったんでしょうね、当時から。それで自分はヨーロッパ映画が好きなんだなって自覚してました。あとは、ホラー映画も好きで当時からよく見てましたね。
― Nero ホラー映画の音楽は作り方も独特なんでしょうね、音楽や効果音がなければ映画が成立しないくらい、音楽は重要なような気がします。人の感情をコントロールできてしまう。
光田:その通りです。音楽・効果音があるからこそホラー映画は怖いんです。例えば「13日の金曜日」を、音を消してみてみると全く面白くなくて。僕が音楽を仕事にしている一つの理由でもありますけど、音楽や効果音というものが、どれほど人の気持ちを動かす力を秘めているのか。その答えを未だ探しているとも言えるかもしれません。
― Nero 今のお話とは真逆になってしまうんですけど、光田さんの楽曲は、最後に必ず答えを教えてくれるような印象があります。もちろん楽曲毎の趣旨によっても違うのでしょうけど、聴き始めて、この曲は最後どんな展開になっていくんだろう、とワクワクしながら最後まで聞いて、その答えが必ず用意されているような。または幾つかの楽曲間で共通する部分がよくあるようにも思います。何か、それぞれの曲で交互に紡ぎあうような。
光田:そうですね、いまのお話の“答えを教える”とういう部分の回答は、“どちらもある”、が正解でしょうか。ヨーロッパ映画ではないですけれど、わざと答えを出さないまま終わっていく、というものも中にはあります。ただ、シーンによっても使い分けてはいますけど、基本的には僕がその曲に対して持つ答えというものは、曲の最後に限らず、必ずどこかに隠し入れている事は確かです。具体的にはフレーズや対旋律とかですね。あとは、そのコード感なんかも自分の中でも重要だったりします。矛盾して聞こえてしまうかもしれませんが、それはあくまで自分の作品に対しての願いであったり、感じた事だったりを楽曲に挿入しているだけで、しっかりとした答えを出しているわけではありません。そこは聴いてくださるファンの方が各々感じて貰えたらと思っています。また、時を隔てて表現する事もあります。
― Nero 時を隔てて…?
光田:そうです。例えば、その楽曲を発表した当時は答えが無かった状態だったものが、何年、何十年と時を経て改めて楽曲を再構築する際に答えを忍ばせていることがあります。例えば、2019年におこなったクロノ・クロス20周年記念ライブ「CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda & Millennial Fair」(以下、クロノクロスライブと呼ぶ)でもそうしたギミックを入れました。
「CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019」の模様はYouTubeにて。
CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda & Millennial Fair FINAL at NAKANO SUNPLAZA 2020 LIVE Blu-ray 絶賛発売中。
『クロノ・クロス』のエンディング曲「RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~」は当時あえて答えを出さず、主人公とヒロインは時を超えて出会えたのか? という事をプレイヤーの判断に委ねていました。そこはプレイヤーさん自身で想像してほしいという意図がありました。そして20年後のクロノクロスライブで、僕からの一つの答えをとあるメロディを入れる事により表現しました。このように時間や時空を越えて答えを届ける、というのは非常に楽しいですよね。当時、しっかりと考えて拘って曲を書いているからこそ出来る技だったりします。
以下、Neroからのご質問に対するお答えは、一部ゲームタイトル『ゼノブレイド3』、『クロノ・クロス』のストーリーに関わる重要な(ネタバレ)を含みます。
クリックすると表示されます。
― Nero 光田さんの中でも、ユーザーの中でも、一度生まれた作品は絶えることなく時間が流れ続けているんですね。差し支えなければ、もう少し他の具体的な例を教えていただけますか?
光田:そうですね、例えば『クロノ・クロス』のヒロイン、“サラ・キッド・ジール”は、『クロノ・クロス』の前作、『クロノ・トリガー』に登場する“サラ”の分身です。キッドのテーマやエンディング曲「RADICAL DREAMERS ~盗めない宝石~」とサラのテーマ曲は表裏一体に作られており、対旋律やコード進行なども共通点があり、全てのモチーフに関連性があるように作られています。
また、『ゼノブレイド3』もそうですね。ゲームの最後、エンディングで“ノア”と“ミオ”の二人は離れてしまいます。その後、再会できたのかどうか、わからないままエンディングを迎える訳ですが、ゲームでキーとなっている「おくりびと」のフレーズが重なり合うように奏でられ、二人はちゃんと会えたんだね、という事を表現しています。
― Nero すみません、私からお願いしておきながら、何といいますか、今のお話は個人的にとても鮮烈で深く胸を打つ内容で、今回のこのお時間、この記事自体も少なからず光田さんの作品とリンクするものとなれば、とても光栄ですし、読者にもきっとこの上なく楽しんでもらえると思います。さておき、音楽の中に答えが隠されているとすると、頭で考える“謎解き”というよりは、一度聴いたことで記憶された音の雰囲気やその時の情景・感情といったものが自然に呼び起こされて答えが紡がれる。まるで楽曲と会話をしているようでもありますね。…でも、今のお話、カット無しでも大丈夫でしょうか…。
光田:笑、大丈夫、全く問題ないです。作品って、結構長い期間をかけて作り上げていくわけですけど、特にシリーズ物になると何年もかけて作る事になります。そうなると答えが出てなかったものっていうのは、やっぱり何年か後に手掛ける続編で答えを出す、といった事はよくあります。そもそも、全ての楽曲は関連性を持たせて作っているので、その部分に気づいてくれる人には、より感動してもらえるでしょう。もちろん、個々の楽曲を一つの曲として捉えていただいて楽しんでもらってもいいわけです。その点は聴いていただく人次第といいますか、受け取り方は十人十色で色々な形があって当然だと思っています。今お話しした僕の答えも、監督の考えやプレイをしてくれる方はまた違った考え方を持っているかもしれない。あくまでそれは僕の考え方であって、そこがまた面白い部分とも思っています。

― Nero 楽曲間に繋がりを持たせたり、個々の楽曲のテーマにしてみても、光田さんが一から考えられている訳ですね。ゲームであればそのストーリーを落とし込む事とか、何らかの事前の要望があるというよりは。
光田:ええ。殆どありませんね。大抵は初めにその作品のシナリオを監督から受け取ります。何度も読ませてもらって自分なりにどう感じるか。例えばシナリオに答えが載っていなくても、自分なりの答えを楽曲に隠し入れたりしています。ただ、それは一つのタイトルすべてを僕が担当する上で成立する事で、そうでないケースも中にはありますね。少し余談になりますけど、例えば映画にしてみても、個人的にどう考えてもエンディングの曲が映画のストーリーにマッチしていなくて、違和感を覚えることがあります。本来、作曲家は作品の最初から最後までしっかりとストーリーを理解して、関連性を持たせて曲を書く事が必要だと思っています。映画にしてもゲームにしても、一つの作品に対して統一性を持たせる上でも。一方で色々な事情でそうはならない事もあるのでしょう。〆切りであったり予算であったり。ただ、自分はそういったことを言い訳にしたくないので、どんな状況であれ作品に一貫性と関連性、そして深みを持たせるように意識しています。
/ 普段の生活 /
― とてもスタイルが良くて健康的でいらっしゃる光田さんですが、普段の食生活はどういった感じなのでしょう。お好きな食事はありますか。
光田:なんでしょう、そうですね、豆腐が好きですね。笑 毎回湯豆腐でいいかなと思っているぐらいです。あとは野菜が好きなので野菜も沢山食べるようにしています。好き嫌いは基本あまりないのですが、大豆が凄く好きですね。ですから納豆もよく食べますし、枝豆やもやしなんかも好んで食べます。
― Nero お財布にも身体にもやさしい、誰もが実践したい食生活を続けられてるんですね。でもよくわかります。大豆類、豆腐と納豆があればまあ満たされますよね、本当に美味しい。
光田:そうなんです。料理でいうと麻婆豆腐、揚げ出し豆腐、大好きですね。やっぱり豆腐料理ばかり食べてます。笑 “湯豆腐と日本酒”、これは最高です。
― Nero お酒はお好きなんですね。
光田:お酒は好きですね。お酒の種類も何でも大丈夫です。でも、夏はビールで冬はいつも日本酒でしょうか。ふるまう事もありましてプロキオン・スタジオのみんなで、富士山の麓でカクテルパーティーを開催したこともあります。でも、確かに10代のときから体形はずっと変わってないですね。基本的に小食だからかもしれません。外食しても一人前をやっと食べきるくらいで。すぐにお腹いっぱいになっちゃうんです。仕事が佳境になると余計に食欲は落ちてしまいますね。でも、それで身体を壊すことはないですね。

/ プロキオン・スタジオの日常 /
― プロキオン・スタジオのみなさんは、基本的には同じ場所で作業されているのでしょうか。また、山梨のスタジオとの連携や、拠点ごとの使い分けについても可能な範囲で教えていただければ。
光田:前者のご質問については、現在はそうとは限りません。コロナ渦もあり各自が最も仕事がしやすい環境で仕事を出来るよう、自由に選べるようにしています。自宅で作業する人もいますし、会社に来て仕事する人もいます。ですが今春、新しい社員が増えた事もありましてスタジオを大幅にリフォームしました。せっかくですので会社(スタジオ)を使ってもらいたい気持ちはありますね。山梨のスタジオは現在は個人的な作業場所として、あと映画やアニメの仕事ではサラウンドでのミックスが必要な時に利用しています。でも東京のスタジオはアトモスまでミックス可能なので作業環境は東京のスタジオの方が充実しているかと思います。山梨のスタジオはより個人的な作業場に移っていくかもしれません。
/ この記事を目にする読者へ向けたメッセージ /
― Nero あっという間のお時間で、既に予定の時間を大幅に過ぎてしまいました。本当に楽しく興味深い貴重なお話をたくさんお伺いできて、たくさんの光田さんのファンの人達をはじめ、この記事を機に光田さんの事を知った人達へも、光田さんのお考えや想いが間違いなく伝わる事と思います。最後に、この記事を目にする読者へ向けて、光田さんからメッセージを頂ければ。
光田:いえいえ、こちらこそありがとうございました。本当にあっという間でした。先にもお話ししましたが、音楽で生計を立てることはやはりかなりの覚悟がないと基本的に難しい事は明らかです。もちろん、これは音楽に限らず言えることですが・・・。自分のように諦めが悪く、周りを顧みず突き進む性格であっても、それが必ずしも良い結果を生むとは限りません。とにかく苦労は絶え間なくやってきますからね。ただ一つ言えることは、どんなことがあっても、諦めずに行動を起こし続け、自分自身に満足しないということですよね。そして、どんな仕事を選んでも何を伝えるか、という事を自分の中で明確に持っておくことが重要だと感じています。
今は本当にエンターテインメント業界は幅広くなり、異なるジャンル、コミュニティが形成されています。数あるエンタメの中で自分の役割とは何なのか。 自分にしか出来ない事とは何なのか? ということを把握しておくことが重要ではないでしょうか。 この時代、万人に受けるものを作り出す事は、誰であっても到底不可能ですし無理だと思います。
自分の場合、ご依頼を頂いて作品をしっかりと精査してお受けするか決めるのですが、今、お話ししたように、自分の役割を理解すると、この作品は必ずしも自分がやらなくてもいいな、と思う事もあります。自分より他の作曲家さんが手がけた方がこの作品は絶対いいものになる、と思うからです。その場合はご依頼をお断りすることもあります。経験値や実績、そういうものとは関係なく、その作品に合う作曲家、脚本家、声優さん、色々あると思いますが、スタッフのキャスティングは何よりも作品自体が良くなる事を第一優先に考えるべきと思っています。一方で、これは自分がやった方がその作品自体、絶対良いものになると思ったら全力でお応えします。
作品がヒットする概念という意味でお話すると、やっぱりその作品自体が、誰に対して、何を、どのように訴えかけるか、という点はとても重要で、そのためには作品の特色、テーマをどのような内容でアプローチするべきか、そういった部分それぞれが上手く共鳴すると、それがヒットに繋がるのだと思います。もちろん絶対はないですし、それでも結果としてよくない結果となる事もあるかもしれません。ですが、自分はこの部分だったら誰にも負けない、というものを持って、それをやりきる事が大切ですよね。そういった意識でこれまでやってきましたし、これからも変わらずやっていくでしょう。仮に失敗であったとしても、全力で臨んだのであれば悔いは残らないですからね。
― Nero 失敗を恐れている場合じゃない、本当にその通りだと思います。そもそも失敗の定義って何なのでしょうね。そういう場合って、意外と周りには気付かれない事が殆どのような気もします。自分の思い込みであったり。
光田:そうなんですよ。その失敗も案外、人によっては逆の伝わり方をするかもしれませんし、後になって良かったなと思える事もあります。それに、本人が思っている以上に案外人は気にしていないものです。それよりも、途中で投げ出してしまったり、諦めてしまう事はその時点で終了してしまいますので一番良くないことだと思います。そして、自分の信念を持って根気よく発信する事を続けていれば、不思議とどこかで誰かが見ていて、次に繋がることはよくあります。
少し話が飛んでしまいますが・・・、ずっと前から、必ず4小節だけでもいいので作曲する、という事を毎日続けています。よっぽど体調が悪くなければ欠かさず続けています。何時、どのようなタイミングで納得のいくメロディが生まれるかわかりませんからね、その可能性を少しでも広げる意味でも。自分で信じた道を進むからには、考え得ることは何でもやる。そして結果が出なければ、それを受け入れることも必要でしょう。でも、時間は掛かりますが、そうした努力は誰かに届きます。
僕も毎日、不安と隣り合わせであり、みなさんと同じです。その上で覚悟をもって音楽活動を続ける、という強い思いで頑張っていくしかないな、と思っています。今日お話したことが一つでも皆さんに伝わって、楽しんでいただいて、何かのヒントになればとても嬉しいです。
光田 康典(Yasunori Mitsuda)Information
NHKドラマ「コトコト~おいしい心と出会う旅~」オリジナル・サウンドトラック
2024年12月に放送されたNHKドラマ『コトコト~おいしい心と出会う旅~』のオリジナル・サウンドトラックが配信で登場。実際に光田のキッチンで収録された音も楽曲に使用され、味覚を刺激する音楽がたっぷり詰まった一枚。ドラマで登場するおいしいスープのように、光田が作り上げた楽曲が優しく心を温める。
光田氏が代表を務める PROCYON STUDIO (プロキオン・スタジオ)
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