ドラムと共に、全国を舞台に圧巻のパフォーマンスを繰り広げる「リエイ」。ストリートドラマーとして、まだ誰も達成したことのない「47都道府県制覇」を成し遂げるために歩み続けるリエイは、その旅の終着地に何を見るのか。
取材場所はリエイが特別な思い入れのある場所、「名古屋久屋大通公園 希望の広場」。特に広場の中央に位置する噴水は、大きな円形盤が重なる最上部に今にも大空に羽ばたかんとするブロンズ像が印象的で、時折訪れる水流と共に作り出される水のカーテンに目を奪われる。午後の日差しに触れ幻想的な輝きを紡ぎ出す、そんな光景を背に、こちらを見つけて先に声をかけてくれたのはリエイだった。
― FORTIS読者の中にはこの記事をきっかけにリエイさんの事を知る人もいるかもしれません。改めて自己紹介をお願いいたします。
リエイ:初めまして、リエイです。ストリートドラマーとして活動しています。よろしくお願いします。今は国内47都道府県をもれなくストリートライブで巡るツアーの最中です。
― 本当に、そんなお忙しい中ありがとうございます。
リエイ:そんな、とんでもないです。FORTISのみなさんこそ今日はわざわざ東京からお越しいただいて感謝しています。
― 今日は主にリエイさんのご活躍に関するご質問や、リエイさんご自身の目標、活動のテーマ、音楽以外の趣味や息抜きの方法、お悩みまでもお聞きできればと思っています。
リエイ:盛りだくさんですね(笑)もちろん頑張ってお答えしますね。何でも聞いてください。

【ストリートドラマーとして】
― では早速ですが始めさせていただきますね。様々なことをお聞きしたいのですけど、まずはやはり、ストリートドラマーとして活躍されている、その理由やきっかけをお聞かせください。なぜライブハウスやライブホールといった屋内のライブ施設ではなく屋外なのかを。
リエイ:そうですね、やはり一番は、誰でも気軽に音楽を楽しんでもらいたいなっていう想いが強くあります。もう5年ぐらいストリートを続けていますけどそういう思いが根底にあって、ただきっかけと言うと実はまた別にあって。最初からそういう思いが特別強かった、という訳ではないんです。きっかけについてはお話が長くなってしまうかな。以前はバンドも含め活動していて、東京を活動拠点としていた時期もあるんです。事務所に所属していた事もあります。端的に言うと、そういった自分ならではの音楽人生を歩んできて、その上でストリートに辿り着いた感じです。いろんな経験をしてきたからこそストリートにたどり着いた、きっかけと言うとそういう答えになると思います。でも、今はとにかく私のドラムでみんなに音楽を純粋に楽しんでもらいたい、音楽を好きになってほしい、そういった想いがとても強いです。
―ネロ ドラムテクニックだけではなく、そのプレイでリエイさんだからこその人を引き付ける魅力は、そういったこれまでの経験や見て聞いていただけるたくさんの人に対する強い想いから生まれるものなのかもしれませんね。
リエイ:なんだか照れますね(笑)ガールズバンドも含め幾つものバンドを経験しました。ブラスバンドも、アーティストさんのサポートも、色んな形態でその時々のリクエストに応じて活動していた時期もありましたね。ただそんな最中、たくさんの事が重なりいつしか疲れてしまって。一度、名古屋に戻って自分の音楽活動をゆっくり見直そうと考えたんです。もう音楽を辞めてしまおうかな、と思った事もありました。ごめんなさい、出たしから重ためな雰囲気になってしまいましたね(笑)
―Kayo そんなことありません!お話いただいてありがとうございます。
リエイ:名古屋が地元なのでとりあえず戻ってみて、結果として良かったのかな、あまり深く考えず、とにかく自分が本当にやりたい音楽、自分が自由に音楽を楽しむ事を最優先に考えようと。そしてその答えがストリートでした。
―ネロ さらっとお答えいただいたけど、とても感慨深いお話です。素晴らしいキャリアがあって、でも何よりもリエイさん自身が楽しく納得のいく形で音楽を楽しめる場所を見つける事、その事を何よりも優先に考えたからこそ今があって。ただそれはストリートライブでリエイさんのドラムを聴いたり見たりして楽しんでいる人たちの姿を、もしかしたら当時からイメージされていたのかもしれませんね。
リエイ:確かにそうかもしれません。ストリートでたくさんの人達に聴いて見てもらって楽しんでいただけるその光景は、漠然とだけれど思い浮かべていたのかもしれません。正直に言うと、ストリートでの活動に踏み出す決断には勇気が必要でした。そんな時、家族のサポートや、今もツアーを共にしてくれているカイムにも背中を押してもらって。自分で下した決断ではあるけれど、やっぱり当時はストリート=1人、という印象が強くて、その不安に打ち勝つ覚悟も必要でした。ただ、何時だってみんなに聴いてもらえるその光景を見据えていたからこそ頑張れたんだと思います。そして今は実際に応援してくれる方も増えてきて、当時のそういった思いが今も心の奥底にあるからこそ、本当に応援してくれるみんなには感謝しているし、とても心強いです。
―ネロ 誰もができる事ではないと思います。リエイさんの音楽を楽しんでくれる人たちや応援してくれる人たちを大切に想う気持ち、そしてリエイさん自身の音楽、ドラムに対する強い想い、決してそれらから逃げるどころか必ず自身で納得のいくよう歩みを止めない、アーティストに限らず、この記事を読んでいる読者だれもが気付かされる事だと思います。見習いたいと。
リエイ:そう言っていただけるととても嬉しいです。でも確かにメンタルは強い方かもしれないですね(笑)路上でやる上で大変なことももちろん数々あります。それでも、もう一人になったんだし、失うものも何もない心境で。とにかく自分が信じる音楽を続ける、そんな気持ちでストリートライブを始めました。
―ネロ リエイさんのライブスタイルって唯一無二になりつつあるというか。リエイさんのストリートライブは見ていて本当に楽しくて、それでいてどこかお客さんを巻き込む特別な魅力があって、お客さんを引き付ける特別なもの。初めて通りかかった方もなんかやっぱり注目しちゃう。
リエイ:今ではストリートのドラムも結構増えてきてるみたいで、国内でも。それは本当に嬉しいです。

【ストリートライブの醍醐味】
― ストリートライブは基本的に誰もがその場所に行けば見る事ができる状態ですよね。お金を払ってとかではなく、たまたまその場所を通りかかった、という方もいるかもしれません。それがストリートライブのスタイルであり醍醐味だと思います。それだからこそストリートライブを選択している、という部分もあるのでしょうか。
リエイ:そうですね。たまたま通りがかった方で、私のライブをきっかけに以前に音楽を辞めた人が、もう一度楽器を手に取ってみたり、アーティスト活動をやめていたけどまた始めた方だったり、実際にいるみたいです。そういった方が一人でも多くいると本当にうれしいですね。私自身ストリートに救われた部分があるので、同じように見てくださる方達もストリートに救われたり、音楽に救われたり、そういった方が増えていくといいなって思いでドラムを叩いています。自由に気軽に誰もが観る事ができる、ストリートライブの醍醐味であって、大切にしていきたいですね。
―ネロ FORTISのメディアとしての発想も同じで、ユーザーの方にはアーティストの取材を通して自分の趣味や音楽活動、アーティスト活動のきっかけや後押しとなるようなメディアでありたいと。なのでとても共感できます。
リエイ:嬉しいです。素敵ですね。
【ストリートツアーの先に見据えるもの】
― 今回のストリートツアー47都道府県制覇、このツアーのテーマや目標についてお聞かせください。
リエイ:はい。テーマというより、小さな目標がたくさんあるんです。その中でも一番は、音楽は自由にやっていいんだよ、という事を一人でも多くの人に伝える事。そして目標としては名古屋で今回のストリートツアーのファイナルとして、お客さんにたくさん来ていただいて一つのイベントとして成功させたい、というものがあります。
―Kayo それにしても、移動はキャリーバックにドラムを全部詰めてらっしゃる姿をYouTubeで見たんです。長距離の移動では実際どのように運ばれてるんですか?
リエイ:まさに動画の通りで、キャリーバッグ二つと大きめの旅行鞄で、カイムと二人で運びます。頑張れば一人でも行けるんですけどね、結構重いので(笑)、二人でなんとか移動できる感じですね。
―Kayo そもそも折りたためるドラムは販売されてるんでしょうか、それとも自身で制作されたのでしょうか。
リエイ:それが個人で制作されている方がいらっしゃって。折りたためるドラムセット、と名前もそのままで販売されています。ただ折りたためる事で、どうしても音は軽く小さめになってしまうんですけどね。
ーKayo それでも拝見したライブ動画ではとても力強い音でした。もう十分にドラムの良さが伝わるような音量だったので、今のお話を聞いてびっくりしています。
リエイ:そうですね、野外だったら十分かもしれませんね。ちなみにシンバル類は通常のものを組み合わせています。小さめのものを。
【ストリートだからこその苦難】
ー あえてお聞きしますけど、ストリートだからこそのトラブルについてお聞かせください。
リエイ:細かいことは数えきれないくらいたくさんあります。女性二人なのでどうしてもね、男性の怖い方に絡まれたりした事もあります。スタッフのカイムがいない一人の時に怖い思いをしたこともあります。今は殆どのライブが二人なのでその点は心強いですけどね。
ーKayo でもリエイさんはストリートであってもきちんと許可を取られているとお聞きしています。
リエイ:そうですね、ライブ中に止められたり、様々なリスクをなくす上でも許可はきちんと取っています。手続きは大変な事もよくありますけど、公式にきちんと告知ができて、見ていただける人たちにも安心して観ていただきたい。それに私がストリートライブの良さを広く伝えていく上で、もし先導している立場なのだとしたら、なおの事きちんと手続きは踏みたいなって思っています。
ーKayo ストーリーだと良くも悪くも誰にでも観ていただける半面、反感を買うこともある訳ですね。
リエイ:そうですね。それでもし何か問題になって、許可を取っていなかったら不利になっちゃうので。許可さえ取っていれば、もし何かあっても説明がつきます。ストリートは自由である反面、もちろんリスクもあります。それは確かです。
ーKayo でもストリートライブを続けていると、今では特に名古屋では殆どの人達がリエイさんのことを知っているのではないでしょうか。
リエイ:そうですね。今は、おそらく名古屋だったら殆どの人たちに知ってもらっていると思います。ちなみにこの場所、噴水前では今はやってないんです。でも思い入れのある場所なので、いつかちゃんと許可を取ってオフィシャルでやる、っていうのが一つの目標です。全国制覇を経て、その実績を見ていただいて許可が取れるようになったらいいなって考えています。
ーネロ そうなると、全国ツアーファイナルの場所は名古屋であってもここ噴水前広場ではない、という事ですね。
リエイ:そうなんです。また別の広い場所を探しているところです。
(その後ツアーファイナルの詳細が決定しています)

【日焼け対策】
ーKayo 個人的に凄く気になる事があるんです。いつも外でドラムを叩いているのに、リエイさん全く日焼けしてないんです。とっても不思議で。
リエイ:そんなことないですよ(笑)確かに元は白い方かな。でもやっぱり焼けちゃいます。
ーKayo でも全然白いですよ。日焼け対策はどのようにされてるんですか?
リエイ:日焼け止めを多めに塗るくらいで。もう最近はあんまり気にせずに叩いてます。(笑)
ーKayo 凄く白くて羨ましいです。
リエイ:元はかなり白いので、外に出なければすぐ戻りますね。ただ最近はまたうっすら焼けてるかな。
ーKayo そうですよね。ストリートライブでは外にいる時間が長いですものね。それこそYouTubeで拝見させていただいたのが、8時間を通しで叩かれた時がありましたよね、本当に凄いなって。
リエイ:その時はもう日焼けなんて全然気にしてなくて。と言うか開き直りですね(笑)
ーKayo 日焼けもそうですし体力もかなり消費しますよね、熱中症にも気を付けないといけないし。
リエイ:そうですね。その当時はとにかく我武者羅でしたね、目立つことを再優先に。今はもうやらないですけど(笑)
ーKayo おかしな事をお聞きしてすみません、気になってしまって。
リエイ:いえいえ、もちろん私も日焼けは気にはしています。そこもストリートのデメリットでしょうね。Kayoさんお綺麗だし、美容に関する事は気になりますよね(笑)
【ストリートだからこその出会い】
ーKayo え!そんな事ないです。では美容に関する事以外のご質問で、、やっぱりストリートでは音楽を通した出会い、お客さんはもちろん、同じようにストリートライブで活動されているアーティストさんとの出会いもあったりするのでしょうか。
リエイ:そうですね、出会いでいうとストリートならではの、ライブハウスだと出会わない方々が多いのは確かです。同じアーティストであってもふらっと会いに来てくれたり。そういうのは嬉しいですね。
カイム:面白いのは、ライブハウスだと音量が大きいのもあって小さな子が来づらい反面、ストリートだとその制約がなくて小さな子がたくさん来てくれるんです。
リエイ:お客さんで子どもの割合は本当に増えました。
ーKayo そうですよね。動画でも小さな子が多い印象があります。
リエイ:家族で来ていただけると本当に嬉しいんです。
ーKayo 特にアンパンマンドラムがとても可愛いな、と思いながら動画を見ていました。
リエイ:見ていただけたんですね(笑)そういう企画も、子ども向けに用意するようになりました。子供にも親御さんにも、ご家族で楽しんでいただきたいですね。
>>>>>>>>>>> 次会へ続く。
リエイ
(ストリートドラマー)
【X.com】@drummerie_xi
【youtube】https://www.youtube.com/@RIEI_Drummer
FORTIS.TOKYO
interviewer Kayo / writer ネロ