【 新国立劇場 】 フルオーディション企画・第8弾 2026年5月公演『エンドゲーム』 全キャスト募集します!

小川絵梨子芸術監督 最終シーズンのフルオーディション企画は、満を持して小川自らが演出!
『ゴドーを待ちながら』で知られるベケットの傑作『エンドゲーム』を上演します!
「終焉」のときを待つ二人の登場人物…、人間とは、生きることとは──

小川絵梨子芸術監督が、その就任とともに打ち出した支柱の一つ、すべての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画。第8弾となる今回は、いよいよ演劇芸術監督の小川絵梨子自らが演出を担当いたします。

小川が選んだ作品は、1957年の初演から半世紀以上を経ても世界中で上演され続けている、サミュエル・ベケットの傑作『エンドゲーム』です。小川は、本作を、今まさに終わろうとしているかのように見える荒廃した世界の中で、「終わらないためにどう生きるか」を探求する物語だと語ります。

この度、オーディション詳細が決定いたしました!2025年3月12日より応募を開始、4月から5月にかけてオーディションを開催し、合格者には26年5月の公演にご出演いただきます。

<演劇 『エンドゲーム』 公演概要>

【会場】新国立劇場 小劇場 ほか
【公演日程】2026年5月公演予定 ※ 6月上旬まで全国公演の可能性あり
【作】サミュエル・ベケット
【翻訳】岡室美奈子
【演出】小川絵梨子
【芸術監督】小川絵梨子
【主催】新国立劇場 オーディション詳細
 https://www.nntt.jac.go.jp/play/news/detail/13_029389.html
 ※ オーディション応募希望の方はこちらよりご応募いただけます。

 ・一般発売日:2026年3月20日(金・祝)/料金:未定
 ・チケットに関するお問い合わせ: 新国立劇場ボックスオフィス:03-5352-9999 (10:00~18:00)

ものがたり>

家具のない室内。舞台奥に小さな窓が二つ。カーテンは閉じている。壁際にはバケツが二つ、並んで置いてある。古ぼけたシーツを被って車椅子にかけている盲目のハム。もうひとり、クロヴが不自由な足取りで室内をウロついている。どうやら主従関係のようだ。二人はとりとめのない会話を続け、ハムは常にクロヴに文句を言い、怒鳴り散らし、イライラしている。クロヴはたまに外を覗いたりもするのだが、見えるのは殺伐とした風景。お互い、そんな日常に絶望しうんざりしていた。やがて退屈しのぎにハムが、バケツの中の人間に話しかける。中にいたのは彼の父親らしい。そしてもうひとりは……。

<小川絵梨子(新国立劇場 演劇芸術監督・演出)コメント>

フルオーディション企画第8弾のオーディション募集開始にあたって、小川絵梨子より応募してくださる皆様に向けたコメントが到着しました。

2018年に始まりましたフルオーディションでの公演は、今回で8回目を迎えます。初回の『かもめ』をはじめ、『反応工程』『斬られの仙太』『イロアセル』『エンジェルス・イン・アメリカ』『東京ローズ』そして『消えていくなら朝』と、多彩な作品を上演してまいりました。そしてこのたび、サミュエル・ベケット作『エンドゲーム』を上演いたします。

このフルオーディション企画は、演劇の可能性を広げ、探究することを目的として始まりました。初めての試みであったため、どれほどの方にご関心をお寄せいただけるのか分からない中でのスタートでしたが、こうして本企画を重ねることができましたのはご参加くださった皆さまのおかげであり、本劇場にとりましてもこの出会いの積み重ねはかけがえのない財産です。これまでオーディションにご参加くださった皆さま、そして今回のフルオーディションにご興味をお持ちくださった皆さまに、心より深く感謝申し上げます。

もし本作『エンドゲーム』にご関心をお寄せいただけましたら、ぜひご応募をご検討いただけますと幸いです。皆さまとお会いできる日を心より楽しみにしております。何卒よろしくお願い申し上げます。

作品について

『エンドゲーム』の世界は、どうやら『ゴドーを待ちながら』の時代よりもさらに荒廃が進んでおり、部屋の外に生き物の気配はまるで無く、また人間関係は一層の悪化を見せ、今まさに世界は終末を迎えようとしているように見えます。この世界の終わりの中で、登場人物たちは変わりなく繰り返される日常を生きています。この物語は、一見すると世界の終わりを描いた陰鬱な世界観ながらも、実は“終わらないためにどう生きるか”を問い直す物語でもあると考えています。ベケット作品の登場人物たちのように、時間と存在への無力感と対峙しながらも、それでもなお生きることの意味を模索し続ける姿は、普遍的な人間そのものの姿です。ベケット自身、この『エンドゲーム』を「自分の作品の中で最も嫌いじゃない作品」と評したとされています。また、私が特に心に残っているベケットの言葉に「Try again. Fail again. Fail better.」というものがあります。冷徹な現実への視点の中に人間的な温かさを宿すベケットの考え方にはどこか救いも感じます。失敗を繰り返し、終わりに近づく中にあっても「どうやって終わらせないか」「われわれはどう生きるのか」という問いを絶えず問い続ける姿勢こそが、人間の希望であることを描きたいと考えております。

登場人物について

全部で4名です。ハムと、ハムと親子関係にある(と思われる)クロヴ、そしてハムの両親であるナッグとネルです。ハムは壮年期の終わりから中年期にかけての人物として、老いと人生の終わりが訪れつつある年齢として設定する予定です。しかし、すべての登場人物におきまして、演じられる方の実年齢が設定と一致している必要はございません。ご興味を持っていただけた役に自由にご応募いただけましたら幸いです。

[小川絵梨子 プロフィール]

2004年、ニューヨーク・アクターズスタジオ大学院演出部卒業。06~07年、平成17年度文化庁新進芸術家海外研修制度研修生。18年9月より新国立劇場の演劇芸術監督。 近年の演出作品に『ART』『おやすみ、お母さん』『管理人/THE CARETAKER』『ダウト~疑いについての寓話』『検察側の証人』『ほんとうのハウンド警部』『死と乙女』『熱帯樹』『出口なし』『FUN HOME』『死の舞踏/令嬢ジュリー』『RED』など。 新国立劇場では『ピローマン』『デカローグ』『レオポルトシュタット』『アンチポデス』『キネマの天地』『タージマハルの衛兵』『骨と十字架』『スカイライト』『1984』『マリアの首-幻に長崎を想う曲-』『星ノ数ホド』『OPUS/作品』の演出のほか、『東京ローズ』『かもめ』『ウィンズロウ・ボーイ』の翻訳も手掛けた。